公図をもとに境界を復元する方法

国土交通省のサイトに

公図と現況のずれ

というのがあります。

この内容自体はひとまずおきますが,注目すべきなのは,この公図と現況のずれを確かめるのに国土交通省が行なった「公図の標定」です。

「公図の標定」については具体的な方法が「都市再生街区基本調査規定」に書かれています。

この規定で特に重要なのは

「公図の標定は、公図現況重ね図をベースに,街区点を基準として,公図をヘルマート変換(縮尺補正を行わないもの)及びアフィン変換のそれぞれの方法により座標変換し,最小二乗法により街区点と変換後の当該公図上の対応点との残差が最小となるよう行う。」

という部分でしょう。

これはまさに公図をもとに境界を復元する方法そのものです。

公図には歪みがありますので,アフィン変換が有効ですが,この座標変換方法は土地家屋調査士でも使っている人はごく少数です。

この規定は今まで先鋭的な土地家屋調査士の有志が行なってきた境界復元の方法の根拠法になりうるのでは,と思います。

特に筆界特定の調査委員をしている土地家屋調査士にとっては,アフィン変換使って意見書を書くときの心理的ハードルが下がることになるでしょう。

都市再生街区基本調査規定

(目的)
第1条 この規定は,国土調査法第2条第2項の規定に基づく都市部の街区内における地籍調査のための基礎的データの整備に必要な基準点等に関する作業方法等を定めることにより,必要な制度を確保すること等を目的とする。

(公図の標定)
第30条 街区点測量によって得られた街区点成果を基準として,公図を評定し,その適合度を区分するものとする。

都市再生街区基本調査作業規定運用基準

公図標定の方法(規程第25条1)

第25条 街区点の測量成果を基準とする公図の標定方法は,別表第26に定めるところ
による。

別表第26
1.公図の標定は、公図現況重ね図をベースに,街区点を基準として,公図をヘルマート
変換(縮尺補正を行わないもの)及びアフィン変換のそれぞれの方法により座標変換
し,最小二乗法により街区点と変換後の当該公図上の対応点との残差が最小となるよ
う行う。
2.公図の標定は,座標変換の基準となる街区点を4点以上設定して行う。

公図の成り立ちと精度について

法務局にある旧土地台帳付属地図(俗にいう公図)は明治時代に作られたものですが、一度に作られたものではなく、何回かに分けて作られています。税金の徴収がおもな目的だったので、ほとんどは大蔵省が所管して作られていますが、内務省が所管したものもあります。

内務省のものは大蔵省と違って税金の徴収が目的でなく、国土開発の基礎として地籍地図を作ろうとしていました。

このため大蔵省の地籍図では軽視された、税金のとれない官有地もきちんと測量しており、正確なものが多いのですが、数は多くありません。事業自体が途中で立ち消えになったようです。

作成を指示された地方では、大蔵省の地籍図も同時期に作らされていて、そのうえに内務省の地籍図ですから、負担が大きすぎたのでしょう。

大蔵省が所管した地籍図は明治初期に地引絵図というのが作られたのが最初です。この地籍図は出来不出来の差が大きく、当時の和算家の署名のある、きわめて正確なものもありましたが、いい加減なものが多かったようです。

そこで大蔵省は明治18年に「地押調査ノ件」という通達で再測量を、さらに明治20年に、「地図更正ノ件」という通達で、いい加減な地籍図の作り直しを命じます。

この時に作られた地籍図を俗に「更正図」と言います。「地図更正ノ件」では測量の方法から図面の作り方を詳細に指示していて、この通りに作れば相当正確な地籍図ができるようになっています。

ただ全国すべてで更正図が作られたわけでもありませんし、昔の地引絵図をそのまま流用して更正図としているようなものも多く、やはり地域によって精度はまちまちです。

現在法務局にある公図のうち精度のいいものは、

1,和算家など当時の専門家が作った地引絵図
2,内務省が所管した地籍図
3,明治20年ころに新たに測量して作った更正図

で、それ以外はあまり精度はよくないようです。