ブロック塀を建てるときは

土地の境界は人間が勝手に決めた線ですから,目には見えません。ですから境界杭や境界プレートなどを入れて分かるようにするわけです。

これがあればひとまずは安心です。

ただこういう境界標識は小さいものが多いので,外構工事などで移動したり,亡くなったりすることがあります。そこで重要なのは境界付近にある構造物です。プロック塀,側溝などですね。

こういうのは移動しにくいので,土地の境界でもめ事が起こった時とても頼りになります。

土地の境界がはっきりしない場合,占有状況で判断されることが多いからです。占有状況というのは土地を自分のものとして持っている(使っている)状況のことです。

塀を建てる時は隣の人に立ち会いを求めて,境界を確認した上で,遠慮せず境界ギリギリに建てるのが正しい建て方です。間違ってもひかえて建ててはいけません。

我々が境界確認のために立会をすると,たまにこの塀は10センチひかえて建ててある,と主張する人がいます。当事者が生きていたり,筆界確認書があるような場合はいいのですが,

「何か証拠になる資料はありますか」
「いや死んだおじいさんが言ってた」

こういう伝聞程度ではその主張はなかなか通りません。
そもそも塀を建てるのは占有状況をはっきりさせるためでもあるので,境界と塀の間に微妙なスペースはつくるべきではないのです。

筆界特定と問題点

土地境界に争いが生じた場合,以前は裁判所で争う(筆界確定訴訟)しか方法がありませんでした。

しかしこの筆界確定訴訟は次のような問題点があります。

1、判決確定までには相当の時間やお金がかかる。
2、裁判をすると,隣人関係に悪影響が及ぶことが多い。
3、土地境界に関する資料収集が難しい。
4、訴訟担当者に土地境界に関する専門的能力・知識がない場合が多々ある。
(弁護士は業務範囲が広く,土地境界争いに精通している人が多くない)

そこで境界の争いを早く,安く解決するため、筆界特定制度が創設されました。

筆界特定の利点は上記の筆界確定訴訟の問題点を解決または軽減するところにありますが,次のような問題点もあります。

1、紛争のなかに所有権の範囲の争いも含まれる場合に対応できない。

土地の境界と所有権の範囲は別で,たとえば土地の一部を分筆せずに売ったような場合は筆界と所有権界は異なってきます。

こういう場合は所有権界こそが重要で,筆界を決めても問題は解決しません。

2、裁判と違って確定効がない。

裁判で確定すれば,それが最終的な決着になります。蒸し返すことはできません。しかし筆界特定は法務局の行政判断なので,裁判でひっくり返ることもあります。

もっともこれはめったになく,大阪の場合,筆界特定申請は今まで3000件以上申請されていますが,裁判になってひっくり返ったのは3件とのことです。

3,当初期待されていたほど早くできない。

現在大阪では9ヶ月程度かかっているようです。

おとなりから境界の立ち会いを求められたら

おとなりから、土地の境界の立ち会いを求められることがあります。

よくわからないまま出て行くと、何かの専門家みたいな人から「お二人の土地の境界はどこですか?」と聞かれます。

住宅地の場合はたいていブロック塀なんかがありますから、「たぶんブロック塀のこちらがわです」という感じになると思います。

でも畑など住宅地ではないとき、住宅地だけど塀がないときは、困ることがあります。

とくにお父さんから相続した土地などは、境界といってもよく分からない人が多いのではないでしょうか。

立ち会う前にすべきこと

立ち会いを求められたら、立ち会い日時までにすべきことがあります。

それはまず自分がその土地の境界を分かっているかどうかです。

分かっていれば、立ち会いでその主張をすればすみます。

相手の主張と食い違うこともあるでしょうが、それはしかたがありません。

この場合は境界の争いがある、ということで別のステージに移ります。

境界がよく分からない場合

境界のくいやプレートがなく、塀や溝もない場合、あっても複数あってどれが境界かよく分からない場合があります。

よく分からないまま立ち会いに行くのは危険です。

おとなしくしていると、集まった人のなかで、自己主張の強い人、声の大きい人の意見がそのまま通ってしまうことがあります。

なにか違うような気がするけど、反対するのも気が引けて、あとで後悔します。こういう場合どうすればいいのでしょうか。

多数が集まる立ち会いをさける

立ち会いには色々な人が来ます。地主や町内会、水利組合の人、市役所の職員。

多数が集まるとなかなか自分の意見を言うことがむずかしくなります。よく分からない場合はなおさらです。

立ち会い前に土地家屋調査士に意見を聞く

立ち会いにはその境界を確認して測量する専門家が来ます。普通は土地家屋調査士です。

その土地家屋調査士に日時をずらして一人で立ち会うのがおすすめです。

そこで境界についての意見を聞くのです。土地家屋調査士は法務局や市役所から資料を集めています。

ちゃんとした人なら事前に現況測量もしています。

土地家屋調査士は多くの人が集まる立ち会いのとき、自分の意見はあまり言いません。

とりあえず地主や町会の人の話を聞き、意見を求められたときか、地主の主張が法務局の資料と矛盾するようなときだけ意見を言います。

あまり出しゃばると、トラブルのたねになることを経験上よく知っているからです。

しかし専門家として意見は必ずもっています。聞かれれば自分が境界と考える線とその根拠を言ってくれるはずです。

たとえば、法務局の資料ではこう、市役所の資料ではこう、実際に面積を測って比較するとこうなるので、というふうに説明します。

その説明に納得すればその境界を認めればいいし、納得できなければ、認めなければいいのです。

資料があれば、自分の主張線もだんだん分かってくるはずです。

土地家屋調査士はおとなりの人に雇われているので,依頼者に有利な意見を言うのでは,と思うかもしれません。

たまにそういう人もいるかもしれませんが、たいていの土地家屋調査士は中立の立場をとります。

それは隣地所有者を怒らせて争いが起こると,仕事がそこでストップしてしまうからです。

境界の立ち会いとは何なのか

土地の境界は登記されたときに決まります。一度決まるともう動かすことはできません。

立ち会いをしても、そこで境界を「決める」ことは建前としてはできないのです。

なにをするかというと、すでに決まっている境界を「確認」しているのです。

平成になってから登記された土地は登記所にちゃんとした測量図があるので、それを見ると境界は分かります。

たいていはコンクリートのくいとか、矢印のついた金属プレートなどが現地に残っています。なくても測量図から復元できます。

こういう場合は立ち会いは、原則としては必要ありません。念のためにすることはありますが。

明治から昭和30年代に登記された土地に測量図はほとんどありません。あってもあてになりません。

昭和40年以降なら、たいてい測量図はあります。ただし昭和40年、50年あたりの測量図は精度の低いものが多く、この測量図をもとに境界を復元するのがむずかしい場合があります。

そこで境界の確認をするため、立ち会いがおこなわれるのです。

境界とドイツ民法

日本の民法では土地境界の確定方法に関する規定がありません。

そこで日本の境界に関する訴訟などではドイツ民法920条を参考にして境界を確定する場合が多いようです。

ドイツ民法920条
「境界線がはっきりしていれば、そこを境界線とする。境界線がはっきりしないときは、占有状態による。占有状態がはっきりしないときは、争いのある部分を半々にする。
その結果が実情(土地の面積など)と一致しないときは実情を配慮して公平な方法で境界を定める。」

日本の民法でもはっきりした規定を設けてくれればいいのですが,なかなか難しいようです。

公図をもとに境界を復元する方法

国土交通省のサイトに

公図と現況のずれ

というのがあります。

この内容自体はひとまずおきますが,注目すべきなのは,この公図と現況のずれを確かめるのに国土交通省が行なった「公図の標定」です。

「公図の標定」については具体的な方法が「都市再生街区基本調査規定」に書かれています。

この規定で特に重要なのは

「公図の標定は、公図現況重ね図をベースに,街区点を基準として,公図をヘルマート変換(縮尺補正を行わないもの)及びアフィン変換のそれぞれの方法により座標変換し,最小二乗法により街区点と変換後の当該公図上の対応点との残差が最小となるよう行う。」

という部分でしょう。

これはまさに公図をもとに境界を復元する方法そのものです。

公図には歪みがありますので,アフィン変換が有効ですが,この座標変換方法は土地家屋調査士でも使っている人はごく少数です。

この規定は今まで先鋭的な土地家屋調査士の有志が行なってきた境界復元の方法の根拠法になりうるのでは,と思います。

特に筆界特定の調査委員をしている土地家屋調査士にとっては,アフィン変換使って意見書を書くときの心理的ハードルが下がることになるでしょう。

都市再生街区基本調査規定

(目的)
第1条 この規定は,国土調査法第2条第2項の規定に基づく都市部の街区内における地籍調査のための基礎的データの整備に必要な基準点等に関する作業方法等を定めることにより,必要な制度を確保すること等を目的とする。

(公図の標定)
第30条 街区点測量によって得られた街区点成果を基準として,公図を評定し,その適合度を区分するものとする。

都市再生街区基本調査作業規定運用基準

公図標定の方法(規程第25条1)

第25条 街区点の測量成果を基準とする公図の標定方法は,別表第26に定めるところ
による。

別表第26
1.公図の標定は、公図現況重ね図をベースに,街区点を基準として,公図をヘルマート
変換(縮尺補正を行わないもの)及びアフィン変換のそれぞれの方法により座標変換
し,最小二乗法により街区点と変換後の当該公図上の対応点との残差が最小となるよ
う行う。
2.公図の標定は,座標変換の基準となる街区点を4点以上設定して行う。

公図の成り立ちと精度について

法務局にある旧土地台帳付属地図(俗にいう公図)は明治時代に作られたものですが、一度に作られたものではなく、何回かに分けて作られています。税金の徴収がおもな目的だったので、ほとんどは大蔵省が所管して作られていますが、内務省が所管したものもあります。

内務省のものは大蔵省と違って税金の徴収が目的でなく、国土開発の基礎として地籍地図を作ろうとしていました。

このため大蔵省の地籍図では軽視された、税金のとれない官有地もきちんと測量しており、正確なものが多いのですが、数は多くありません。事業自体が途中で立ち消えになったようです。

作成を指示された地方では、大蔵省の地籍図も同時期に作らされていて、そのうえに内務省の地籍図ですから、負担が大きすぎたのでしょう。

大蔵省が所管した地籍図は明治初期に地引絵図というのが作られたのが最初です。この地籍図は出来不出来の差が大きく、当時の和算家の署名のある、きわめて正確なものもありましたが、いい加減なものが多かったようです。

そこで大蔵省は明治18年に「地押調査ノ件」という通達で再測量を、さらに明治20年に、「地図更正ノ件」という通達で、いい加減な地籍図の作り直しを命じます。

この時に作られた地籍図を俗に「更正図」と言います。「地図更正ノ件」では測量の方法から図面の作り方を詳細に指示していて、この通りに作れば相当正確な地籍図ができるようになっています。

ただ全国すべてで更正図が作られたわけでもありませんし、昔の地引絵図をそのまま流用して更正図としているようなものも多く、やはり地域によって精度はまちまちです。

現在法務局にある公図のうち精度のいいものは、

1,和算家など当時の専門家が作った地引絵図
2,内務省が所管した地籍図
3,明治20年ころに新たに測量して作った更正図

で、それ以外はあまり精度はよくないようです。